シェル&チューブ

シンプルな構造であり、幅広い用途に使用可能なシェル&チューブ式熱交換器についてまとめました。後半にはシェル&チューブ式熱交換器を取り扱っているメーカーも紹介しているので、自社に合った熱交換器を検討中の方は要チェックです。

多管式熱交換器の特徴

シェル&チューブ式熱交換器は多管式熱交換器とも呼ばれ、太い円柱状の胴体(シェル)の中に複数の円管(チューブ)を配置するタイプの熱交換器です。

基本構造がとてもシンプルで古くから利用されてきました。幅広い材質にも対応でき、用途や条件に合わせて柔軟に設計可能です。並行流により熱交換を行うため、低温側と高温側で大きな温度差が必要となるのが注意すべきポイントでしょう。

構造上、以下の3つのタイプに分けられます。種類ごとに特徴を説明していきますので、ぜひ参考にしてください。

固定管板式

シェルの両端に管板を固定したシンプルな構造の機器です。管板からチューブへのアクセスが簡単なため、チューブ内の洗浄が容易にできます。

一方、シェルの洗浄は困難です。流体の中には汚れが少ないものもあるので、そのような流体を用いることがよくあります。そのため、腐食性の流体や汚れの多いプロセスを持つ流体を使用するケースには向きません。

また熱膨張に関する検討も必要で、流体同士の温度差が大きいときは伸縮接手を取り付けて熱応力による機器トラブルを回避する必要があるでしょう。

U字管式

U字に曲がったチューブを管板に固定したタイプの機器です。シェルとチューブは依存せず、熱膨張が自由になります。

U曲部があるチューブ側にはシェルカバーが取り付けられており、そちら側からシェル内の清掃が容易。ただし、チューブのU曲部は洗浄が難しく、汚れが溜まりやすいです。

チューブ自体は温度差に強いというメリットがあるのですが、汚れやすいというデメリットがあるため、チューブ側の流体には汚れが少ないものを使うことが多いです。

ただし、比較的クリーンな流体を使用した場合でも、徐々に汚れが堆積していくことが少なくありません。そこで、U字管式のシェル&チューブ式熱交換器を導入する際は、汚れの付着を最大限考慮することが必要です。

遊動頭式

シェルの片側に固定タイプの管板、もう一方に動かせるタイプの管板を取り付けています。固定管板式とU字管式のどちらよりも構造が複雑でコスト負担が大きいのが特徴です。

石油精製や石油化学の分野で利用されることが多く、構造上、チューブを容易に取り出すことが可能です。そのため、シェルとチューブの両方を洗浄でき、キレイに保つことができます。

そのため、汚れの多い流体をチューブ側・シェル側のどちらから流しても対応可能です。

多管式熱交換器ができること

  • 液体/気体、どちらの流体も取り扱うことができる
  • 低温や高温、低圧や高圧、蒸発や凝縮、加熱や冷却など、幅広い条件で使用できる
  • 機器のタイプによっては分解できる

多管式熱交換器ができないこと

  • シェル部分の洗浄が難しいタイプがある
  • チューブの洗浄・取り替えが難しいタイプがある
  • プレート式と比較するとサイズが大きい

多管式熱交換器の導入事例

食品工場に熱交換器を設置し、液熱交換によって省エネに成功。2t蒸気ボイラー3基から排水される約150℃のブロー水を、排水前にシェル&チューブ式熱交換器を通すことで熱を回収しています。

給水タンクから送られるボイラー給水は常に熱交換器を通過する仕組みとなっており、回収した排熱を給水の加温に利用することで、15℃のボイラー給水を53℃まで上げることが可能。

これにより、24時間ボイラーを稼働させた場合、ボイラー効率約90%、回収熱量265KWが実現可能。これを重油に換算すると一日あたり58,000円、年間で17,430,000円分の省エネになります。

参照元:MDI公式サイト
(https://www.mdirect.jp/product/product-3260/product-3292/)

多管式熱交換器を扱っている企業一覧

神威産業

φ8mmフィンチューブを採用

チューブメーカーと連携することで「φ8mmフィンチューブ」によるコンパクト化を実現しています。

シェル&チューブ式のデメリットであるサイズ面を上手くカバーしている熱交換器メーカーと言えるでしょう。φ8mmフィンチューブ以外のサイズのチューブも取り扱っているので、用途・条件に合わせて選択できるのも特徴です。

山一製作所

チタンに精通したメーカー

チタン管を採用したシェル&チューブ式熱交換器を提供。耐食性・耐久性に優れたチタンだからこその特性を活かした機器となっています。

用途や条件によっては、劣化の不安が大きくなることも。そのような場合でもチタン管を使用した熱交換器なら不安を軽減できるでしょう。また、洗浄しやすいように脱着タイプの管束を用いているのも特徴です。

クロセ

耐震性・耐久性に配慮した機器設計

商品説明会やセミナーにより、不安・疑問の解消に積極的に取り組んでいるメーカーです。多数の納入実績を持ち、しっかりした強度設計・耐震設計で製造されているので、高い安心感があります。

地震大国とも名高い日本では、耐震性・耐久性といった機器の性能はとても重要です。万が一の事態が発生しても、設備の故障等のトラブルを回避することで企業利益の低下を防げるでしょう。

シーテック

コンパクトな多管式熱交換器を提供

チタン製のφ6mm~φ10mmの細管を採用したコンパクト型多管式熱交換器を提供しているシーテック。このタイプの機器は小型・軽量なので、スピーディかつ低コストで製造可能です。

構造上、管内流速が早くなるため自浄作用効果を得ることができます。これにより、汚れが付きにくく、長期的利用が可能に。また、スタンダードタイプの多管式熱交換器も取り扱っています。

勝川熱工

専門力を駆使した充実のサポート

既存設備の中に簡単に組み込めるように設計・製造しています。チューブ内の流体は蒸気にも対応可能なので、使用用途が広がるでしょう。

構造が単純なため、簡単に使えるだろうと思われがちなシェル&チューブ式熱交換器ですが、条件・用途により覚えておかなくてはいけないこともあります。

そこで勝川熱工は熱交換器専門メーカーとして、培ってきた知識・技術を駆使してサポート。安心して聞きを使用できる環境づくりを徹底しています。

ゼンシン

極細管によりメンテナンス負担を軽減

U字管式やチタン製チューブを採用したタイプの機器を取り扱っています。極細管を採用した設計のため、コンパクトであることはもちろん、汚れにくくなっているのが特徴。

面倒なメンテナンスの負担を削減できます。条件に合わせてチューブ径や材質等を選択することができ、様々な利用シーンを想定した製造が可能です。

ハシテック

オーダーメイドの能力設計が可能

φ5.3~の極細管を採用したコンパクトサイズのシェル&チューブ式熱交換器を提供しているハシテック。流体のスピードを早め、スケール付着を軽減していることで、メンテナンスが容易になっています。

ステンレス製の伝熱管を用いており、耐食性に優れていることも特徴的。寿命が長いことに加え、軽量かつ小型なので設置場所に困りません。またコンサルティングを通して能力設計を行うオーダーメイドにも対応しているので、企業ごとの要望や条件、用途に合った熱交換器を導入することが可能です。

藤産業

ニーズをとらえた製品開発が強み

産業用熱交換器一筋で製品開発を行ってきた藤産業。コンパクトタイプの多管式熱交換器を複数用意しており、低価格&短納期での提供が可能です。

熱伸縮の課題をクリアした「Uチューブ式熱交換器」も開発しています。

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タイプ別に熱交換器のスペックを簡単比較!

熱交換器の3タイプ(シェル&チューブ・プレート・プレート&シェル)をそれぞれ「サイズ」「設置しやすさ」「性能」「整備しやすさ」の4つの観点で比較しています。
2021年4月調査

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