熱交換器に使われる素材

熱交換器に使われる素材

熱交換器にはどのような素材が使われているのでしょうか?ここでは、熱交換器の伝熱管と伝熱板に使われる素材について紹介します。

伝熱管の素材

熱交換器の伝熱管には、耐食性の高いステンレスや熱伝導性の高いアルミニウム、軽量なプラスチックなどが用いられています。

ステンレス

ステンレスは耐食性に優れており、錆びにくく腐食しにくいという特性があります。ステンレスの表面には不動態皮膜があり、保護膜となって腐食から守ってくれるのです。さらに不動態皮膜は一部破壊されても再生します。

なお、ステンレスの分類ではクロムニッケル系を主成分とするオーステナイト系ステンレスがあり、代表的な「SUS304」は18%のクロムと8%ニッケルを含んでいます。SUS304は耐食性のほかにも加工性や溶接性に優れているため、熱交換器の素材として非常に適しているのです。

チタン

チタンは軽く強度が高いうえ、錆びにくいのが特徴です。たとえばステンレスは海水に触れると錆びますが、チタンは錆びません。なかでもチタン合金は航空・宇宙用素材のほか自動車や船舶にも活用されています。

アルミニウム

アルミニウムはステンレスやチタン、鉄やニッケルよりも熱伝導率が高いことが特徴です。そのため、熱交換器にアルミニウムを使用することで熱を効率良く伝えることができます。さらにアルミニウムは比較的安価なため、コストパフォーマンスにも優れているといえるでしょう。

ただ、アルミニウムは融点が650℃ほどと高温に弱く、工業用の熱交換器の素材としては適さないことも。その点ステンレスや鉄、ニッケルなどの融点は1,500℃前後ですから、高温下での使用にも耐えられます。

プラスチック

主にポリ塩化ビニル・ポリプロピレン・PFA(フッ素樹脂)など。プラスチック製の熱交換器はそれほど多くありませんが、プラスチックのもつ「耐食性がある」「軽量」「安価」という特徴は熱交換器の素材としても適しています。

フィン(伝熱板)の素材

フィンの素材に求められるのは、「加工性」や「耐食性」「高強度」「高い熱伝導性」。その条件を満たすアルミニウムは多くの熱交換器で用いられています。
また、熱交換器によってはステンレス製のものもあります。

アルミニウム

アルミニウムは耐食性があるうえ、高い熱伝導性をもっています。そのため、熱交換器の交換熱量をアップさせたい場合にも適している素材です。ただし高温に弱いため、高温下で使用する場合にはステンレスなどの素材がおすすめです。

ステンレス

ステンレスはアルミニウムほど熱伝導率が高くないものの、耐食性や強度に優れています。また、高温下での使用にも向いているため、工業用の熱交換器などに用いられています。

熱交換器の腐食を防ぐには

熱交換器にはアルミニウムやステンレスなどの素材が使われています。アルミニウムやステンレスは耐食性に優れているものの、熱交換器が腐食してしまうことも。
また、腐食にも種類があり、全面腐食や隙間腐食のほか、腐食によって割れが生じる応力腐食割れなどがあります。とくにステンレスの不動態皮膜はステンレス中のクロムと大気中の酸素が反応して形成されるため、酸素が不足しがちな隙間での腐食が生じる可能性があります。

熱交換器の腐食を防ぐポイント

使用環境に適した素材を選択する

熱交換器に使用される素材はさまざまですが、どの素材にも弱点となる環境や成分が存在します。
たとえばアルミニウムには酸化被膜が形成されるため腐食しにくいという特徴があります。しかし乾燥した空気中では腐食性が発揮されるものの、水分のある環境下では酸化被膜が破壊されてしまい腐食してしまいます。
また、ステンレスは不動態皮膜によって腐食しにくいものの、塩化物イオンが存在すると孔食を生じて腐食します。
そのため、熱交換器の腐食防止には使用環境に合った素材を選ぶことが大切です。

コーティングする

熱交換器の腐食を防ぐために、コーティングを施すのも有効です。腐食に有効な塗装としてはカチオン電着塗装や塩害対策塗装などが挙げられるでしょう。
コーティングを施すことで素材の腐食原因となる成分と触れずに済むため、熱交換器の腐食を防止できます。

設計や運転時の使用方法を工夫する

たとえば熱交換器の腐食が冷却水側から生じている場合、冷却水の種類を見直すことはもちろん、冷却水を管内に流す・縦置きにする・冷却水の流速を管理するなどの対策が挙げられます。
また、徐々に腐食が進行することを防ぐために異物混入の防止、孔食を防ぐためにろ過装置を設置するなどの方法もあります。

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熱交換器の3タイプ(シェル&チューブ・プレート・プレート&シェル)をそれぞれ「サイズ」「設置しやすさ」「性能」「整備しやすさ」の4つの観点で比較しています。
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